学校長よりごあいさつ

◇他者との関わりの中で自己を高めていこう 
◇失敗を恐れず失敗から学んでいこう 
◇一生続けられる好きなことを見つけよう 

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桐光学園中学校・高等学校
校長 中野 浩


さまざまなメディアで取り上げられているように来年は大学入試改革が実施されます。何をどのように教えるのかという指導者(教員)主体の教育から、何をどのように学ぶのかという学習者(生徒)主体の教育に変えていこうという国の方針を体現する改革の一つと言えるでしょう。大学入試においてどのような形で実現されるのか不安視する声も聞かれますが、その理念は、価値あるものといえます。本校では、創立以来、さまざまな形でこの理念の実現化を試みてきました。男女別学、講習制度、50種ものクラブ活動、海外への修学旅行・語学研修プログラム、キャリア教育、大学訪問授業、ICT教育、等々、すべて、学習者がどのように主体的・計画的に取り組み、自己を高めていくのかという教育目標にもとづいたプログラムです。自己を高めていく時に必要不可欠なのが他者の存在だと思います。他者との関わり、そこから実感する共通点・相違点を通して相対的に自己を見つめていくことが自己を高めていくことの契機となるはずです。本校では、成長の過程に応じて、中学1年から高校3年まで学年テーマを挙げています。他者の内容が生徒・教員という個人から、より包括的な社会へと変化しているものの、基本的には自己と他者との関係をさまざまな経験から構築していくことが主眼となっています。

日本を含め、世界は不安や絶望に満ちあふれています。紛争や差別・格差・・・。どの問題も簡単には解決できない難問のように見えます。ただ、内容も問題点も異なる不安や絶望にも共通点を見い出せるのではないでしょうか。自己と他者の関係の隔絶やねじれが原因だと思います。自己と他者は異なる存在ですから、当然、価値観や考えも異なることでしょう。異なる価値観の他者の存在を否定したり無視することで、不安や絶望が拡散しているのではないでしょうか。価値観の異なる自己と他者の関係を構築するためには、さまざまな場面を通してさまざまな他者と関わっていく経験を積み重ねていくことが大事です。そうしたさまざまな経験には、数々の失敗もあるかと思います。その失敗の原因を考えることでしか他者理解や自己認識の道は開かれません。桐光学園の多様なプログラムや学年テーマは、その実現のために考えられたものです。

本校のプログラムの一つである「大学訪問授業」では、各分野で顕著な活躍をされている先生方が講演をします。ある講義を聴いた中学生は「話の内容が分からない所もあったけど、先生が楽しそうに話していて、自分の専門分野が大好きなことがわかりました」と感想を述べました。本当にどの先生方も自分の仕事が大好きであり、楽しそうに話されます。

3月に引退した大リーガーのイチロー選手は、引退会見で記者の方の「なぜそんなに長く野球を続けられたのか」という質問に、「野球が大好きだということに尽きます」と答えていました。好きなことを一生続けられる―これ以上素敵なことはないと思います。桐光学園でのさまざまな経験の中から一生続けられる好きなことが見つかるように祈念しています。